社会学者の研究メモ

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社会学

いただきもの

計量経済学の入門書をいただきました。これは授業で使えそうなかんじです。ありがとうございます。オビに「行間を削除できる自習テキスト」とあります。これはどういう意味だろう?統計学からの計量経済学入門作者: 藤山英樹出版社/メーカー: 昭和堂発売日: …

見合い結婚と恋愛結婚

いつまでもブラックモンブランだと社会学ブログとしてヘンなので、社会学っぽいネタを。次回の家族社会学会で報告する予定の話。しばしば対比的に考えられている「お見合い結婚」と「恋愛結婚」ですが、実は純粋にこれらが分離していたことはあまりないです…

なぜ公私が分離するのか

私にとって「公と私の分離」という現象はずっとエニグマ*1だった。どうしてこの二つは分離しているんだろうか? 社会学者はこの謎を解けなくするための余計な知識*2を積み重ねることはあっても、真っ正面からこの問いに取り組んでこなかった。しかししつこく…

佐藤毅先生

以前のエントリでゴッフマンの『出会い』にふれましたが、訳者の一人は佐藤毅先生といって、私の学部時代の指導教官だった人です。残念なことに亡くなっていますが、なんだかいろいろ思い出してきました。 佐藤先生のゼミは人気ゼミで、ゼミの倍率は2〜3培だ…

自分書評

本書の前半はとらえどころがなく、どこかぼやっとした印象。しかし後半で展開される「経験の隔離」「抑圧されたものの回帰」の部分はギデンズのオリジナルのモダニティ論であり、このおかげで本書は「ポストモダン」やら「ハイパーモダン」やらの(なんだか…

続・組織論

グラノベッターの紹介などでも有名な渡辺先生の本が出てました。個人的に社会学のネットワーク論には少し違和感があるのですが、この本は(ミネルヴァからもらった新刊案内の目次を見る限り)バランスがとれてそうです。さっそく注文しました。組織社会学作…

組織理論

他のところでも書いていることですけど、私は、社会学の強みが生かせる分野は3つあると考えています。階層、家族、都市です。これらについては社会学は膨大な理論と経験研究の積み重ねを持っており、階層・家族・都市は社会学の花形だと(勝手に)思ってます…

現在進行中

宣伝と自分の奮起を兼ねて報告。 ナン・リン『ソーシャル・キャピタル』の翻訳(共訳)を出版予定(ミネルヴァ書房)。目指せ8月。 単著『親密性の行方(仮題)』を出版予定(世界思想社)。目指せ7月。 メディア論の本を4人くらいで出版企画中(私は分担)…

NPOの経済学的意味

つねづね疑問に思うことだけど調べていないこと。NPOの存在意義って、経済学的にはどう論じられるんだろうか?経済学の教科書的には、私企業は社会的に必要とされるサービスを効率的に提供する限りで存在できる。だから営利を生むことは、そのまま社会的な貢…

怖いものをみた

『少子社会日本:もうひとつの格差のゆくえ』研究というのは、科学的にやらないとやっぱり怖い目にあうものだ...。著者の方は学会にちゃんと出席され、報告されていることは評価できる。えらそうですみません。だからちゃんと(というか最低限)実証しようと…

社会学者への不満

「社会学者への不満」 社会学者の物言いへの不満として、「どうして最先端の状況について語りたがるのか? そんなものを追いかけるより、今そこにある最大の問題への処方箋を考えてほしいのに」という思いを抱いて10数年。ひょっとすると「別に、世の中をよく…

ファーストフード

マクドナルドなんか「静かなる殺し屋」なんていわれて、ここんところバッシングが激しいけど(マレーシアの保健省とかイギリスの王子様とか)、でてくる記事を読む限りでは典型的なフードファディズムにしか聞こえない。信頼できるデータとその分析がないか…

セミナー終了

なんとか無事に終わりました。1日目終わった時点で風邪ひいたときは焦った...。関連?情報(http://www.stata.com/support/faqs/res/statalist.html) 7.1 What is the correct way to pronounce ‘Stata’?Stata is an invented word. Some pronounce it with…

統計セミナー1日目終了

週末の数理社会学会はほんと楽しかったです。論文でしか知らなかったいろんな人とお話ができたし。ポスター報告もまずまず盛況。(つまんない内容でほんとすみません。)懇親会ではM.m.さんがみなに紹介する機会をつくってくれた。気恥ずかしかったけど、あ…

「話し合い主義」への違和感

もう勢いで書いちゃおう。市場が万全ではない以上、どこかにゼロサムゲームが発生し*1、誰かが社会や組織を制御しないとみなが(あるいは一部の人が極端に)不幸になってしまう。首尾良く制御するためにはどうしたらいいのだろうか? 民主主義なんだからみん…

人間と社会

とあるところで、「社会は人間に還元できるか」みたいなことをめぐってやりとりがあったようだ。こういう問は、それが発せられる文脈によって全く答えが変わってくるので、「場合による」としか答えられないのだろう。「人間」も「社会」も言葉であって、言…

取材力資源

最近、「市民みんなが記者だ」を標榜したOh My Newsをたまにみるようになった。「市民」という言葉にいまいち共感できない私は、最初はちょっと斜に構えて見てたのだが、みてみるとなかなか楽しめる。しかし、これは「やはり」なのだが、たいていの「記事」…

地域間格差

地域間格差:所得格差「小泉政権下で拡大」実証(毎日新聞サイト)記事の分析は市町村区のデータですね。手元には県別のデータしかないけど、気になったのでちょっと調べてみました。一人当たり県民所得(SNAサイトより)ですが、1990年から2003年までの動き…

Stataセミナーのお知らせ

第1回 社会科学のための統計分析:社研・計量分析セミナー(http://ssjda.iss.u-tokyo.ac.jp/seminar.html)東京大学社会科学研究所が行う「社研・計量分析セミナー」の一部として、Stata*1を利用した初〜中級者向けコースが開催されます。3月5日(月)から…

企業倫理

不二家やら旧三和やらいろいろ不祥事ネタが多いですね、最近。以前、利潤を追求するのが使命である企業と「倫理」という言葉が頭の中でうまくつながらなかったので、知り合いの経営学者にそのことを聞いてみたことがあります。答えは「倫理は儲かる」という…

Stataガイドブック

私を含む6人共著の『Stataで計量経済学入門』、出版が遅れていましたが、2月10日で確定しそうです。去年の11月に「1月はガチ」とか言ってたわりに、2月にずれこみましたが、今度こそ間違いなし。もうすでに校了してるし。事前予約についてはまた後日ここでア…

結婚=デザート説

コース料理ではデザートは食後に出てくる。 天ぷらうどんを食べて満足したときは、さらに大福が食べたくなる(テツ談)。結婚って、今ではデザートなんじゃないだろうか。どこか自分の仕事や趣味で満足している自分がいて、そこにさらにプラスアルファの幸せ…

組織と家族(3)

前のエントリのコメントにも書かれているように、家族を組織論つまり「市場or組織」のアナロジーで考えることにはいろんな問題がある。そのなかでも最大の難点は「子ども」。これは(精子バンクや代理母なんかで)技術的には市場化できるものだけど、よほど…

組織と家族(2)

現在の社会では、家族から受けるサービスのほとんどすべては他のセクターから調達することができる。ホテルに泊まり(掃除も選択もやってくれる)、医療サービスを受け、友人・知人からメンタルなサポートを受ける。だから家族を組織論的に論じることは可能…

組織と家族(1)

理論(学説)を離れ、家族に関する経験的な研究の世界にはまりこんでから約二年。腐臭を放っている理論脳にムチ打ちながら、最近考えていることは、やはり「家族」のこと。理論的に考えれば考えるほど、家族っていうのは、「いったいこりゃなんだ」という謎…

ホワイトカラーエグゼンプション

いよいよ大詰めになってきた模様。ほんとにやる気なんでしょうか。この制度は「よい言い方」をすると「管理職を自営業扱いしよう」というもの。自営業者や一部専門職(と大学教員)はごく一部を除いて労働時間がかなり自由。しかし自営業者・専門職は成果が…

支持政党

小泉政権以降政党支持の構造が変わったとよく言われているような気がするが、実際正確にどう変わったかよくわからないので、自分で調べてみた*1。まずざっくりと言うと、日本人の支持政党選択を規定する最も大きな要因は圧倒的に年齢(若い人はほとんど無党…

社会学のきょうだい研究

京大の社会学研究室じゃなくて。兄弟姉妹についての社会学的研究というのがあるんですよ。しかもアメリカだと膨大な量の研究がある。そこで、頭を整理してみました。要するにこういうものです。きょうだい構成sibling configurationには「サイズ(きょうだい…

姓継承率の推計(リトライ)

以前ミス(私のミスでもあり、調査設計者のミスでもあり)があったので推計方法を変えてやり直した。姓の継承が途絶えた家、結構あるようなかんじ。かなり面倒なので信頼区間までは割り出してないけど、無配偶の人が姓を継承しない(姓を継承した子供を作ら…

知識は匿名であるべし、しかし...

テキつくりシリーズその2。社会学の世界も、徐々に「誰々研究」の世界から脱却しつつあるような気がします。これ自体は「進んだ科学」への第一歩ですし、健全なことでしょう。知識とそれを提供した人とは原理的に切り離し可能ですし、切り離すことによるメリ…