社会学者の研究メモ

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2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧

低成長経済化における福祉国家戦略

以前取り上げた、 Esping-Andersen, Gosta, 1996, "After the Golden Age? Welfare State Dilemma in a Global Economy" in Gosta Esping-Andersen (ed.), Welfare States in Transition. Sage Publications. だが、かなり断片的なまとめになっていたので、…

福祉レジームとジェンダー:文献情報

スウェーデンで社会保障を研究されているid:dojinさんからSynodos Blogの拙稿にいただいたコメント中に「文献情報があれば」という要望があったので、改めてここで一部を紹介する。時系列的に並べておくので、参考になれば幸いである。さしあたりの出発点は…

なぜ社会学の格差研究はややこしいのか(その二)

前回説明したように階層とは価値付けされた資源へのアクセスの格差であり、あくまで人々による資源の価値付けに依存した社会構造の記述である。したがって多くの人に共有された価値付けがない資源については、そういった資源へのアクセス格差を議論すること…

なぜ社会学の格差研究はややこしいのか(その一)

院生に勧められて以下の論文を読んだ。専門分野(家族)のジャーナルと違って『社会学評論』は少々見落としがちになるので、こういう機会は助けになる。 吉川徹,2003,「計量的モノグラフと数理:計量社会学の距離」『社会学評論』53(4):485-498. 内容自体は…

社会階層と社会的ネットワークの多様性

(注意:論文内容に関する判断は、ぜひ実際の論文をお読みになった上でお願いします。) 大和礼子, 2000, "社会階層と社会的ネットワーク"再考, 『社会学評論』51(2), 235-250. 家族と社会的ネットワークに興味がある研究者なら読むべき重要な論文だと思った…

「幼稚園と学力の関係」における相関関係と因果関係

統計データの解釈について、しばしば指摘される注意事項が「相関関係と因果関係を混同するな」というものである。今回はこの警句について、「幼稚園出身の子の正答率、高い傾向 全国学力調査」(asahi.com)という記事を題材にして少々詳しく説明してみよう。…