社会学者の研究メモ

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2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

社会学にとって理論とは何か

「理論と実証」について考えるときに、しばしば忘れられてしまうのは、理論と実証以前に、その両者に意味を与えるもっと大事なことがある、ということです。それは「問題関心」です。そして多くの実証研究は、この問題関心から出発しています。階層研究であ…

福祉レジームと剥奪

Rudd Muffels and Didier Fouarge, 2004, "The Role of European Welfare States in Explaining Resources Deprivation". Social Indicators Research 68: 299-330. ちょっと一言ではまとめにく内容でしたが、簡単に言えば個人の(相対的)剥奪を個々の属性…

構造と制度

教科書ネタです。研究指導していると、たまに基本用語を再確認する必要が出てくるときがあります。制度と(社会)構造という言葉は研究者によって微妙に使い方が異なるにも関わらず、社会科学系の研究ではしばしばクリティカルな位置を占めていることもあり…

福祉切り詰めの政治

政治学よりの話ですが、関連分野なので備忘録的に簡単なサマリ。 Paul Pierson, 1996, "The New Politics of the Welfare State". World Politics, 45: 143-179. 一言でいえば、「福祉の切り詰め(welfare retrenchment)がいまいち進まないのは、政治家が福祉…

計量分析におけるミクロとマクロ

このエントリは関心のない人は読まない方がいいかもしれません。(頭が痛くなるわりにそれほど重要な話でもないので。)計量分析の世界では、しばしば「性別」や「学歴」が個人レベル変数で、たとえば国の特徴を表す変数(「社会支出のGDP比」など)がマクロ…

女性の雇用に関する比較研究

短い文献紹介です。 Tanja van der Lippe and Liset van Dijk, 2002, "Comparative Research on Women's Employment", Annual Review of Sociology, 28:221-41. 女性の雇用に関するここ25年ほどの比較研究についての、レビュー論文です。よく整理されている…

外国語での研究報告に関する雑感

今回は研究内容から離れてエッセイふうなことです。海外の学会やシンポジウムに行くたびに、いろんな研究者の方から「なんで日本人研究者は海外に出ていって報告しないんだ」と聞かれているような気がします。特に日本出身で海外の大学院を経験されている方…