自分書評
本書の前半はとらえどころがなく、どこかぼやっとした印象。しかし後半で展開される「経験の隔離」「抑圧されたものの回帰」の部分はギデンズのオリジナルのモダニティ論であり、このおかげで本書は「ポストモダン」やら「ハイパーモダン」やらの(なんだかよく分からない)時代診断と一線を画している。
簡単に言うとこんなかんじである。近代は内的準拠性(道具的合理性)を追求してきた。目的手段連関によるコントロールを武器に効率性を追求していく内的準拠性は、豊かさやある程度の平等をもたらしたが、他方で決して人生、死、突然の不幸(近親の事故死)、生まれの不幸(先天性障害)などの「意味」を与えてくれない。むしろそういったものを日常世界から隔離することで効率的に社会や組織を運営してきたのだ。しかし最近、近代人はこういった状態に耐えきれず、どうも「意味」を取り返す運動をはじめたようだ。それを「ライフポリティクス」と呼ぼう。近代人はついにウェーバーにはなれなかったのであるとは書いてないけど。
誰だったかな、「再帰性に外部はない」とか書いたのは。んなはずないし、ギデンズはそんな陳腐なこと言ってません。
モダニティと自己アイデンティティ―後期近代における自己と社会
- 作者: アンソニー・ギデンズ,秋吉美都,安藤太郎,筒井淳也
- 出版社/メーカー: ハーベスト社
- 発売日: 2005/05
- メディア: 単行本
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