社会学者の研究メモ

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NPOの経済学的意味

つねづね疑問に思うことだけど調べていないこと。NPOの存在意義って、経済学的にはどう論じられるんだろうか?

経済学の教科書的には、私企業は社会的に必要とされるサービスを効率的に提供する限りで存在できる。だから営利を生むことは、そのまま社会的な貢献を意味する。

他方、ボランティア団体・NPOの社会貢献は、利益を生むことを目的としてない。だからNPOは経済学的には「社会に貢献することを目的としていない」団体である。ここで「あれ?」となるわけだ。

ひとつの単純な答えとしては、経済学では取引は原則パレート改善をもたらす限りで(どちらも少なくとも損をしない限りで)生じるものであるが、NPOの「社会貢献」を論じる人々の中では、原則取引はゼロサムになっている、という説明ができる。そもそも「ボランティア」という発想自体がゼロサムである。

社会学者としては、この市場経済の社会で強制的な取引など例外的であるのに、人々の頭の中ではゼロサム図式がデフォルトになってるのはなぜか、という問をたてると面白いかもしれない。「企業の社会貢献」というのもまさにそう。経済学的には企業活動自体が社会貢献で、余計なこと(メセナ活動なんか)にお金を使うのは「よい製品を安く提供する」という企業の社会貢献の使命に反して外部性を膨らませ、社会的な不幸を生み出す。しかし一般人は、「社会貢献」をしない企業を低く評価するものだ。

ひとつの社会学的な答えは、以下の通り。企業の本業について評価することは、素人には製品価格以外では非常に難しい。しかし「社会貢献」はシグナルとして目立つので、評価しやすい。そういう合理性がありそうである。一般的に言って、記号・象徴の流通法則に従えば従うほど、経済学的には非効率的な状態ができあがる。広告やブランドにかけるコストなんかまさにそうだろう。

もう一つの答えは単純。取引が強制的ではないのにもかかわらず、企業は「不当に」消費者を搾取している、というもの。商品についての情報の非対称性のことを考えると、この答えも無視できなさそう。

以上素人考えなので、識者の方々のお教えを請いたく思います。