社会学者の研究メモ

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『アジアの家族とジェンダー』

アジアの家族とジェンダー (双書ジェンダー分析)

アジアの家族とジェンダー (双書ジェンダー分析)

必読文献だと思うが、なぜだか今まで読む機会がなかったので、備忘録。(とりあえず「第一部 韓国」のみ。)

第1章 韓国の母性と育児援助ネットワーク

  • 韓国は現在超少子化状態だが、日本と比べて少子化の開始が20年遅く、現在子育て期にある世代はまだ「人口ボーナス世代」にあり、きょうだいを含む親族ネットワークを広く活用することができる。(だから日本の80年代のような「子育て不安」の声は聞こえてこない。だたし子育て期の母親のきょうだい数が減っていくこれからについては、問題が出てくるかもしれない。)
  • 日本では高度成長期の産業化で「主婦化」が生じたが、韓国では60年代では全体的に4割前後の就業率だったのが、経済成長にともなって若年層と中年層が盛り上がっていき、M字型を形成するようになった。(M字型の定着は80年代になってから。)
  • 韓国は女性の学歴が労働力率の上昇をもたらさないと言われる社会だが、1990年では学歴による就業率は(50%弱のレベルで)差が縮まっている。

第2章 韓国女性のライフコースと仕事・家族役割の意味

  • 以前のコーホートでは結婚前の就業経験がなく、結婚(かなり早婚である)や養育後に就職する層が厚かった。このパターンは現在減っており、代わりに多くなってきたのがM字型である(80年代を代表するパターン)。90年代以降は両立型も増えている。
  • 全体としてみるとM字型就労の底が上がってきたように見える韓国女性の就業形態だが、これはみかけだけである。というのは、他方でM字型就労(結婚・出産による断絶)をする女性の割合は増えてきたからである。したがってM字の底上げは主に晩婚化によるものとみることができる。
  • 父系社会である韓国で、女性にとって夫方の家族との関係は「負担のある義務的関係」として認知されているが、他方で実家との関係は(積極的に関与される)日常的な支援の源である。

第3章 韓国の高齢者

  • 「理念としては家族の扶養責任が強調されながらも、現実には家族の扶養機能が急速に低下している」(核家族化、職業移動、女性の就業増加等のため)。
  • 高齢者にとって、「若者が流出してしまった農村部よりむしろ都市部でのほうが三世代世帯の形成が容易なのが、日本と異なる韓国の特徴」。
  • 1988年に施行された国民年金の支給が本格的に開始されるのが2008年からであり、現状では高齢者はその多くが自らの勤労所得か子どもからの支援で生活している。
  • 高齢生活において、日常生活における自立志向(子どもとはときどき会う)が増えているが、他方で身体的介護は配偶者や子どもに期待する割合が未だに強い。
  • 日本でも広く見られた「晩年型同居」は韓国でも見られるようになっている。基本的には別居だが、何らかのきっかけ(配偶者の死亡、健康状態の悪化など)によって同居を開始する、というパターン。