社会学者の研究メモ

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ASR:知名度か能力か?

今日は会議ばっかり(朝から4つ連続)であまり勉強できませんでした。このまま寝るのも悔しいので論文一個だけメモ。

Erin Leahey, 2007, "Not by Productivity Alone: How Visibility and Specialization Contribute to Academic Earnings". ASR, 72(4):533-561.

大学教員間の収入格差の要因を探る分析。既存研究では、

  • 収入←性別、生産性(業績数)、その他コントロール変数

というモデル(回帰モデル)で説明されていましたが、本論文では説明変数に専門化の度合いspecialization、知名度visibility等を加えた同時方程式モデルを推計。いろいろすっとばして、結論は以下。

  • 収入←知名度←生産性←専門化←性別

つまり、「性別が専門化の度合いに影響(女性ほど専門特化しない)、それが業績の数に影響(専門特化している研究者の方が論文の数が多い)、それが知名度を高め、知名度が直接収入に関係している」というモデルが、他のモデルよりも高い説明力を持ったそうです。

ただこの結果は学問分野によっても微妙に異なってきます。たとえば「女性の専門化の度合いが低い」のは社会学者サブサンプルでは統計学的に有意な効果として認められていますが、言語学者では有意な効果になっていません。分野としての多様性言語学では小さく、分散がなかったからでしょう。

横並び報酬の日本の大学教員だとこういう研究自体成り立たないですね。「生産性→知名度」というつながりも日本で研究者やってるかぎりでは少しピンと来ないところがあるような。

しかしまあ、よくこんなサーベイをやるもんだとは思いました。