社会学者の研究メモ

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家族社会学会の感想と反省

先日(9月9日〜10日)行われた第16回日本家族社会学会(上智大学)。ふたつ報告してきました。

(1)最初の報告はUC Irvineの不破麻紀子さんとの共同報告。
・タイトル:「家事分担に対する不公平感の国際比較分析」。
・要旨:「妻が感じる家事分担の不公平感は、マクロ(国)レベルの性別役割分業意識が弱いほど、そして家事分担の平均比率が平等であるほど、夫婦の収入格差や実際の分担比率に左右されやすくなる」というもの。
要するに日本のように「家事は妻がやるもんだ」風な意識が強い国だと、稼いでいる妻が家事を多く負担していていても、あまり不公平感を抱かないが、北欧のような国だと、同じ状況では妻は不公平感を感じる度合いが強い、ということ。
・良かったところ:不破さんはかなりプレゼン上手だった。(私は横でスライドの操作。)ちなみに不破さんは社会学のトップジャーナルといってもよいASR(American Sociological Review)誌のこれまたトップに論文を載せたこともある気鋭の学者。注目度も高かったみたいで、いろんな人たちが見に来ていました。
・反省点:フロアからの質問にちゃんと答えられなかったところも。とくに東北大の田中先生からの質問にうまく答えてなかった気もする。質問(コメント?)内容は「家事分担に対する不公平感がある/ないという話と、家事分担が客観的に公平/不公平だということは別の話。後者を無視して前者の話をする意味は?」みたいな内容だったと思う。確かに世の中の全員が「公平」だと感じていても、何からの客観的指標(たとえば貨幣価値や労働時間に換算して)からすれば全然公平じゃなかったりすることもありますもんね。いま答えるとすれば、「公平だと感じる人ばかりだと、不公平だということを示す客観的指標を示されても世間的な反応が無く、政策に生かせないかもしれない。不公平感の存在を広く認知させるためには、不公平感に影響を与える要素を考える必要がある」となるでしょうか。公平ではなくパレート改善を目指す政策の場合なら、不公平感の研究には(不公平感が効用関数に入らないとすれば)あまり意味がないですね。いや〜ちゃんと考えないといけませんね。

(2)次の報告はテーマセッションの一部で、単独報告。
・タイトルや要旨は別のエントリに書きましたんで、そこをみてください。
・良かったところ:あまりないかなあ...。とにかく今回は「シンプルにわかりやすく、視覚に訴えての報告」を目指して報告しました。NFRJ03(全国家族調査)の成果報告のセッションだったのですが、このセッションには、一部には「聴衆の興味を引きつけてデータの利用者を増やそう」っていうねらいがありますので。その意味では少しだけ貢献できたかな、という気もします。
・反省点:タイトル選択の問題なんであまり言っても仕方ないのですが、NFRJというデータセットの特性からして、向いている分析と向いてない分析があります。今回のタイトルはあまりデータの特性を活かしてなかったです。NFRJ03は高齢世帯や(とくに親族間の)サポートの分析に向いてますからね。森岡先生がおっしゃっていたように、もう少し日本の従来の家族社会学の成果とつなげてテーマ選択をする必要がありました。これは今後の課題。また、原先生から、結婚の質の測定対象からの退出者(離婚経験者)によるノイズを除去できていないという根本的な問題も指摘していただきました。これも今後の課題。パネルデータを使ってやればなんとかなりそうです。

(3)面白かったこと/うれしかったこと
・同じテーマセッションで報告した明○大学の先生がセッション開始時に行方不明でみなあせっていた(もちろんすぐに来られましたが)。
・...だからそれは期待値なんだって...。そして斜め後ろで「フッ」という声が...。(内輪ネタ。)
・お昼休み、義塾生のAさんがコンビニで「ぼーっ」としてたこと。(これも内輪ネタ。)
・同じ学部に所属する教員の方(お目にかかったのは○田先生と○藤先生...別に名前伏せることないんだけど)が学会に来られていたこと。前の学校の時はそういう経験がなく、想定してなかったこともあり、うれしかった。