社会学者の研究メモ

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家事の値段

社会学では家事のことを「再生産労働」と呼ぶことがあります。どうしてかというと、現に食事などは市場で提供されているのに、それを「家事」と呼んでしまうとなんかヘンだからです。(家事を業者に「委託」していると考えるとまあつじつまは合うのですが。)

さて、再生産労働の市場価格はいくらなんでしょうか。詳しくはもあるのでそちらをご参照ください(というか、私はまだこれ読んでない...)。簡単に言うと、SNA(国民経済計算)などでは、次の二種類の推計方法が主に使われます。
機会費用法:たとえば主婦が家事をすることによって失われる市場労働の賃金
・代替費用法:サービスを市場経由で提供する労働者の賃金

以前、学会報告の中で、機会費用法で夫婦の家事の価値を算出し、市場労働による賃金と合計して、「妻と夫のどちらが損しているのか」を計算したことがあります。かなりいい加減な推計なのですが、中産階級の夫婦では、妻労働総価値が280万円、夫労働総価値が480万円でした。これだけみると、「なんだ、やはり夫の方が損してるじゃん」と思われるかもしれません。

しかしこれ、男女の賃金格差が如実に影響する推計なんですよね。同じ時間働いても男女では圧倒的に賃金が違う。もし労働価値を時間だけで計るとすれば、損をしているのは妻の方になります。仕事と家事をあわせた労働時間は、妻が一日7.18時間、夫は6.74時間(2001年『社会生活基本調査』より)。

もうひとつ、家事労働を妻の機会費用や労働賃金で測るのではなく、そのまま市場で提供されるサービスの値段で換算すると、かなり家事の価値は上がるでしょう。家事、業者にやらせると結構高いですよ〜。一時間3000円くらい? 主婦が一日5時間家事をするとして一日1万5000円、一月で45万円。給料まるまるふっとびますね。

しかしまあいろいろ言う前に、さっきの本を読まなきゃ。