社会学者の研究メモ

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取材力資源

最近、「市民みんなが記者だ」を標榜したOh My Newsをたまにみるようになった。「市民」という言葉にいまいち共感できない私は、最初はちょっと斜に構えて見てたのだが、みてみるとなかなか楽しめる。

しかし、これは「やはり」なのだが、たいていの「記事」はそもそも「ニュース」ではない。論評・意見である。これは当たり前だ。というのも、いくら「市民が発信する」と言ってみたところで、一市民とマスメディア企業とでは、取材力格差が激しいからである。「市民」は一次ソースを提供できない。しかし論評は別だ。そして「市民」による論評は、なかなか面白い。

要するにOh My Newsは現在のところ、報道一次ソースをネタに論評を加えるブログや、mixiの「ニュースについての日記」と同じ機能を持っている、ということ。「ニュース」そのものではないのだ。

「市民に可能なのは一次ソースの提供ではなくて論評だ」というのは至極当たり前だと思うんだけど、人に言うとあまり賛同してくれないんだよね。とくに「市民」の力を信じている人たちには...。別に「分業」でいいと思うんだけど。社会科学の調査でも、いまは「調査は調査会社、分析は研究者」という分業をしている。こちらの方が効率がいい。市民力でもってマスメディア企業に対抗したいっていうのなら、取材力のあるプロの個人ジャーナリストに市民が資金援助した方がいい。

ちなみに珍しい一次ソース記事はこちら。非難するつもりはないし、可能性を否定するわけでもありません。しかし、まあこんなもんですよ、市民による「取材」「調査」というのは。