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社会学者の研究メモ

はてなダイアリーから移転しました。

結婚の理論・紛争の理論

社会学

たまには研究メモを書かないとタイトルが嘘になってしまうな。

というわけで、本来の私の研究分野についての、ちょっとした整理的考察をひとつ。

経済学で結婚の理論といえばBeckerやGrossbard-Shechmanあたりになるのでしょうか。BeckerはともかくGrossbard-Shechmanの問題設定は、基本的に社会学のものとあまり変わりません。特徴といえば結婚と労働市場を同時決定的にとらえていることでしょうか(1984の論文)。

社会学独自の問題設定には、homogamy(同類婚)研究があります。homogamyをassortative mating(上から順に組み合わせていくと効用が最大化される)として効率性の観点から考える経済学と違って、問題関心は「混ざり具合」におかれます。ごくごく簡単に言うと、「階級、宗教、民族といった集団特性を横断した社会はよい社会だ」という価値関心が根底にあって、社会的距離(social distance、つまり分断具合)を測定したり、同類婚/異類婚を規定する要因を探ったりするわけです。

他方、価値関心に引きずられてか、異類婚の問題を指摘するような研究は非常に少ない。異類婚(特に宗教異類婚)の離婚のしやすさについての論文が数点あるくらい。

拙著(『親密性の社会学―縮小する家族のゆくえ (SEKAISHISO SEMINAR)』)でも考察しましたが、同類婚にはそれなりにメリットがあるわけです。気持ち的にわかり合える、とか。異類婚はたしかに美しいのかもしれないけど、その後の結婚生活は大変なのではないか? 中産階級と下層階級で結婚すると、お互いの友達で苦労しないか? こういった予測には無理がないと思われます。

しかしこのこと(異類婚のデメリット)を指摘した論文は、離婚率の研究以外にはほとんど見つかりません。しつこく探していると、ひとつだけかすっているがありました。Conference paperですが。

Xiaotian Zhang, 2006, Status Heterogamy: A Marginalized Equalizer in Stratification. Conference Paper: American Sociological Association.

Intermarriage bridges different social groups. It follows that status heterogamy equalizes to certain degree different social statuses, so undermining the hierarchy of social status. Gould argues that inequality functions to reduce conflict among individuals and among groups by establishing order of precedence. Then, in a macrosociological perspective, I would hypothesize that, because people involved in or influenced by status heterogamy tend to avoid the non-institutionalized conflict caused by status heterogamy, society suppresses and marginalizes it. Under the assumption that society's response to status heterogamy has consequences on some behavior and attitudes of the heterogamous couples, statistical findings from GSS data, with certain reservation, support this hypothesis. The findings show that status heterogamy undermines the heterogamous couples' social participation, their trust in other people, their confidence in political and economic institutions, and their satisfaction with friends and with community, but promotes their liberal political attitude.

異類婚カップル内部のコンフリクトじゃなくて、外向きのコンフリクトに関する研究ですね。これは思いつかなかった。

同じようなこと、つまり階層ヒエラルキーはコンフリクトを抑制する(平等化はコンフリクトを促進する)ということをR.Gouldも書いていたな〜とか思っていたら、この論文自体がGouldに依拠したものでした。

Collision of Wills: How Ambiguity About Social Rank Breeds Conflict

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