連帯と承認
- 作者: 武川正吾
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2007/11
- メディア: 単行本
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いまさらながら読了。何はともあれ、本書は必読だと思った。3章が特に印象に残ったので、とりあえずそこだけメモ。
3章 グローバル化と福祉国家
- グローバル化に伴い、国境を越えた企業間の競争が盛んになる。そのため、最低賃金規制や雇用規制、生活保障給付の企業負担増を一国の政府が行うと、待ちかまえているのは資本の逃避(capital flight)である。
- 他方で資本移動に比して労働移動はコストが高いため、各国間の労働条件の格差は残る。つまり「高賃金を求めて労働が移動する」よりも、先進国において「低賃金労働を求めて資本が移動する」方が目立つようになる。
- 以上から、一国の政府に対する資本の発言力が(労働の発言力に比して)高まる。
- これらの動きに対処するには一国政府の社会政策では不可能。国際レベルでの協働による社会政策を実施するしかない。
この前の章で著者は北欧型のネオ・コーポラティズムになかば見切りをつけているのだが、その一番の理由はグローバル化に適応できないから、というものだった。
最初の方では、「連帯と承認が福祉政策の前提となる」と提起されているが、ここに関してはまだ理解できていない。所得再分配についての社会的合意には、メンバー感の連帯の態度が前提となる、と言われているが、連帯がなくとも、「無知のベール」に基づいた契約(あるいはもっと単純に公平性の価値観)で福祉政策の合意は説明できるような気もする。