社会学者の研究メモ

はてなダイアリーから移転しました。

大学との提携はおいしい?

大学の世界にいると、「提携」話があふれかえっています。大学との提携では資本関係が発生しないから他の組織も提携しやすいのかな? 主に下のようなパターンがありますね。

「提携なんで形ばかりで内実がないんじゃないか」という批判もありそう。これに対して、「形ばかりでも、提携には象徴的な意味がある/分かりやすい成果ではなく地道な連携から生まれる効果もある」という反論もありそう。ナン・リンの社会関係資本論social capital theoryでは、関係資本のうまみの一つとして「影響力」を挙げていて、これは要するに「相手の威を借りて自分の立場を優位にする」ということなんですが、そういう意味では「○○町、○○大学と提携!」と新聞に載った時点で提携は「成功」なんですよね。

この場合、例えばA町とB大学で、B大学の方が知名度が高いとすれば、提携の象徴的な利得はA町に多くもたらされます。では大学の方には提携の動機がないということになりますが、研究対象になったり人を送り込めたりして少しばかりのうま味があるかもしれないし、そもそも提携自体にコストがかかりませんし、新聞に記事として載れば無料広告にもなるしで、おいしい部分はきっとあるのでしょう。

ただし、理想論になりますが、ネットワークというのは市場の効率・公平な取引を阻害するものなので、私個人としては手放しで喜んでいいものには思えないですね。つまるところ、提携って「随意契約」ですし。