社会学者の研究メモ

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見合い結婚と恋愛結婚

いつまでもブラックモンブランだと社会学ブログとしてヘンなので、社会学っぽいネタを。次回の家族社会学会で報告する予定の話。

しばしば対比的に考えられている「お見合い結婚」と「恋愛結婚」ですが、実は純粋にこれらが分離していたことはあまりないです。配偶者選択というのは、ほぼ三つのプロセスで進みます。

  • サーチ
  • 調査
  • 意思決定

で、これら三つそれぞれについて、その主体が誰であるかによって配偶者選択方法を分類できるわけです。最も伝統的なのは「親か仲人が相手を捜してきて相手の身辺調査をし、さらに意思決定をしてしまう」場合。最も近代的なのは、すべて自分でやってしまう場合。現代の恋愛結婚では通常「調査」はしないのではないかともいえますが、婚前の付き合い期間が実質的な「素性・相性チェック」の機能を果たしていると考えることができます(合わなければ結婚もしない)。

で、JGSSの新しいデータを使って実際に調べてみたところ、少なくともサーチ主体と意思決定主体がずれている場合というのはかなり多かったです。お見合いでも結局は自分たちで決めている場合もあるし、恋愛結婚でも親が意思決定に強い影響力を持っている場合もあります。

ここから二通りの研究課題を考えることができます。

  • あいまいな領域が存在しているにもかかわらず、「お見合い結婚」「恋愛結婚」という分類は一般に通用している。人々はその際、どういう分類手続きを採用しているのか?
  • それぞれの機能を果たす行動とその主体はどういう風に変化していくのか?

最初の課題についてはBlood(1967)*1でかなり周到に論じられています。ちょっと古いですが。

次の課題についてはいろんな仮説を立てることができます。多様性が増す、というのもひとつの仮説。できちゃった婚なんかだと調査と意思決定プロセスがふつうの結婚と全然違う。サーチ主体についても、他人→自分という単線的な変化ではなく、知人や機関による「紹介」が増えていく可能性もありますね。

*1:Blood, R. O., 1967, Arranged Match and Love Marriage: A Tokyo-Detroit Comparison, New York: Free Press.