社会学者の研究メモ

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企業倫理

不二家やら旧三和やらいろいろ不祥事ネタが多いですね、最近。

以前、利潤を追求するのが使命である企業と「倫理」という言葉が頭の中でうまくつながらなかったので、知り合いの経営学者にそのことを聞いてみたことがあります。

答えは「倫理は儲かる」というもの。別に企業倫理を教えている学者が儲かるんじゃなくて、倫理やらガバナンスやらちゃんとしとかないと企業は大損することがある、下手すると倒産しちゃうってことです。

で、半分納得したんだけど、半分まだよく分からない。たとえば「背任」を防止するために賃金を高めに設定する(スティグリッツのモデル)とか、そういう話は分かるんだけど。こういうコストと倫理を組織に浸透させるコストのどっちが高くつくかとか、そういう話なら分からなくもない。

一時期、IT企業で情報漏洩が頻発してたことがあった。背景には非正規雇用の増加があった。非正規雇用にとって個人情報を売って小遣い稼ぎをするのは、ふつうに合理的。解雇されても正社員ほど痛くないし。パートのおばちゃんが不二家の工場の問題を暴露するのも、ゴシップ好きなおばちゃんにとっては抵抗はない。人件費削減はそういうコストを引き起こすのは当たり前。こういう仕組みは、「企業が不祥事したから叩く」というマスコミの論調では見えてこないわけで。

でどうなるかというと、不祥事起こした企業に対する「社会的制裁(倫理が欠如シトル!!)」とやらで非正規雇用もろとも(あるいは非正規雇用のみが)路頭に迷う。問題の根っこは認識されてないから、同じ問題がまた別の企業で生じる。シモジモの社員が路頭に迷う。

いっそのこと、倫理とか信頼とかそういう基準で企業の不祥事を見るのは止めちゃった方がいいんじゃないか、と考えるわけです。