社会学者の研究メモ

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計量分析の目的

(カテゴリごとに文体を変えることにしました。社会学エントリだと「である」調。)

授業で統計を教えるときに口を酸っぱくして言うのは、「データ分析の大事な目的はデータを単純化することだ」ということ。これが計量分析の大きなメリットであり、またデメリットでもあるのだが、とにかく「データ分析は難しい/ややこしい」という学生が抱くイメージをどうにかしたい、という思いがある。

  • 数百個のサンプルの個々の数値を見るのは面倒だから、代表値(一つの数値)にまとめる。
  • 2*2個のセルのテーブルをいくつも眺めたくないから、オッズ比(一つの数値)で表す。
  • 数百個の点の並び方をみたくないから、相関/回帰係数(一つの数値)で表す。

背後にある考え方を考えなくてよいとすれば、なんと便利な道具だろうか。

もちろん「偶然かどうかを調べる(検定)」「他の影響を排して独自の効果を見る(多変量解析)」といった他の目的もあるのだが、計量嫌いを克服させるためには、「複雑なデータを単純化する」という意識はとくに大事だと思う。...といっても近代の統計技術が検定を中心に発達してきたこともあり、多くの教科書では単純化のメリットを強調していないのだが。