社会学者の研究メモ

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18世紀のパラサイト・シングル

今回も時間がなかったので別の話題でお茶を濁します。

家族のかたちと経済のかたちというのはなかなか緊密に連動するものです。その一つの例が、「独り立ちするのが難しい環境では子どもは晩婚化し、親のもとに長くとどまる」という仮説です。

核家族社会の場合、そして直系家族社会でもきょうだい数が多い場合、独立あるいは分家した者は生計手段をどこからか入手する必要があります。農村であれば新しい土地、都市であれば雇用労働(あるいは新事業)ですね。もしこれらの機会あるいは資源が乏しい場合、晩婚化とパラサイト化が進むことになります。

実際、18世紀フランスの農村では貧農のあいだに土地の欠乏が生じ、そのせいで大量のパラサイト・シングルが発生していることがわかっています。富農よりもパラサイト率が高かったわけです。(むろんその他人口学的条件も関係しますが。)現代の状況も基本的には同じですね。まあ、現代では結婚相手の選択原理の影響も強いでしょうが(山田昌弘説では晩婚化の原因は「経済環境が変わったのに女性上昇婚の理想が変化しなかったから」)、少なくとも独立(離家)できないのは経済的要因によるところが大きいですね。