社会学者の研究メモ

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玄関から出入りしない---社会学で説明する(2)

今回は「田舎では玄関から出入りしない」がテーマ。

そういえば私の実家もそうでした。10年以上住んでいて、玄関から出入りしたのはたぶん数回...。ほとんどは裏口から出入りしていました。玄関を使うのはお客様だけでしたね。

さて社会学的説明。というか社会学するまでもないかな。田舎の家は広い敷地にあることが多い。で、広い敷地にある家の場合、多方面から家の中にアクセスできるので、玄関以外に出入り口ができるのです。玄関とふだんの(家族の)出入り口、つまり勝手口を分けることには合理性があります。というのは、勝手口の付近には雑多にいろんなモノ(車や家の鍵をかけるフックとか、よそ行きではないつっかけとか)を置いておけますが、玄関はお客様に見えるところなのでそうはいかないからです。(つっかけを置くなら、いちいち靴箱にしまわないと行けない。)

勝手口みたいな空間を社会学では「裏局域back region」と呼びます。勝手口という裏局域にアクセスできるのは家族、そして親類です。実家にはよくおじさんおばさん(とイトコ)が遊びに来ましたが、玄関から上がった人はいなかった。勝手口か、居間の縁側から上がってましたね。

Pasoruさんが「みなが玄関を使わない」ことに違和感を感じているのなら、それはたぶんプライバシーの感覚が周囲とずれているからでしょうね。本人からすれば気を許していない親類(おそらく姻族でしょう)がずかずかと裏口から入ってきて、本人としては「あんたに裏局域をみられたくないわよ」と感じるのではないでしょうか(仮説)。

あとは、やはり田舎の嫁は嫁の姻族(夫の血族)からすれば「身内」なんですよね。プライバシーの面では気を遣ってくれないでしょう。