社会学者の研究メモ

はてなダイアリーから移転しました。

『平等と効率の福祉革命』

以前共著で論文を書いた訳者の一人の方から頂きました。ありがとうございます。エスピン=アンデルセンは2000年前後からジェンダー格差を意識した論考を続けていますが、本書はその一つの到達点であり、重要な著作であると言えます。平等と効率の福祉革命――新…

反事実的状況のマクロシミュレーション

(授業やら会議やらでバタバタ気味で、誤字などある可能性もありますが、とりあえずあげておきます。)性別賃金格差の研究では、しばしば「男女の◯◯構成が同じだと仮定すれば賃金格差は△△だけ縮小する」といった、マクロレベルでの反事実的状況の想定が行わ…

社会学における「理論の実証」

(以下は二〜三カ月前に書いたメモですが、寝かせておいてもあまり意味がなさそうだし、稲葉先生もシノドスの論考を公開されたのでいいタイミングだと思うのもあり、ちょっと手を入れた上で公開します。) 社会学の問いの特徴 私は、学部のゼミでは(大学院…

御礼

ICPSR国内利用協議会でお世話になっている東大社研の前田先生より下記のご著書を恵投いただきました。ありがとうございます。先日政治学会のセッションにもおよびいただいたこともあり、徐々に政治学分野の研究者の方と交流が増えてきたように思います。いろ…

「家族福祉論の解体」感想

先日の研究会にも参加してくれた久保田さんの最近の論文です。 久保田裕之、2011、「家族福祉論の解体」『社会政策』3(1): 113-123. 非常に示唆的な論考で、興味深く読みました(今年一番の収穫だったかも)。私なりに内容をまとめると...(下手なまとめかも…

第一回「連携」研究会を終えて

「来ても10人くらいだろうから、ちっこい部屋でいいや」という予想を大幅に上回る30名の方が参加された「人文学・社会科学における質的研究と量的研究の連携の可能性・第一回研究会」を、無事終了致しました。(無事、といってもちょっと研究会本体の時間を…

マルチレベル分析の解説資料

twitterをみてて思いましたが、いわゆる「マルチレベル分析」についてはいろいろ誤解もあるようです。7/10の「計量分析手法研究会」(@立命館大学朱雀キャンパス)で報告した解説資料を置いておきます。(学会の報告資料ではないので参考程度ということで。…

「統計オタク」の分析はつまらない?

実践としての統計学作者: 佐伯胖,松原望出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2000/01メディア: 単行本購入: 48人 クリック: 629回この商品を含むブログ (16件) を見る 第5章「統計の実践的意味を考える」(佐藤俊樹) 研究会に向けて、同じ社会学者が書…

第一回連携研究会のお知らせ

下記PDFの要領で研究会を開催致します。参加希望の方は事前に告知文PDFにある連絡先までお願いします。会場がそれほど広くないので、万が一希望者多数の場合は参加制限することもございます。ご了承ください。ワークショップ「人文学・社会科学における質的…

『社会調査のための統計学』

社会調査のための統計学 ?生きた実例で理解する? (現場の統計学)作者: 神林 博史 ,三輪 哲出版社/メーカー: 技術評論社発売日: 2011/07/23メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 63回この商品を含むブログ (7件) を見る一変数の分布から統計的検定の基…

Stataの予測値コマンド(3)

※本記事に一部加筆修正しました。(2012.7.4)Stata v11から、予測値の計算に新たにmarginsコマンドが導入されました。marginsはほぼすべての推定モデルに対応しており、確率や限界値など、柔軟なかたちでの予測値出力を可能にしてくれます。とはいえ、扱い…

量的研究と質的研究の連携に向けて

足の調子が少し悪くてひきこもってます...。しかし手は動く。筒井が所属する立命館大学人文科学研究所からの助成で、「人文学・社会科学における質的研究と量的研究の連携の可能性」研究会をスタートさせました。さしあたり3年間継続します。研究助成を申請…

図(だけ)で説明する回帰分析

分かっているようで意外と分かっていないのが回帰分析です。回帰分析の考え方をできるだけ図だけで説明した資料を作りましたので、適宜ご参照ください。「(ほぼ)図(だけ)で説明する回帰分析」(PDF)主な内容は、以下のとおりです。 説明変数と撹乱項の相関の…

固定効果とランダム効果の区別

混合効果モデルの話の続き。(引き続き少しテクニカルなので注意。)「固定効果とランダム効果」の区別については、いくつかの解説テキストやウェブサイトに記述があるが、どうもしっくりこないので私なりの解釈をメモ程度に書いておく。(より詳しくは7/10…

Stataでマルチレベル・モデル(2)

今回の内容は少々専門的なので注意。Stataで計量経済学入門 第2版作者: 筒井淳也,水落正明,秋吉美都,坂本和靖,平井裕久,福田亘孝出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2011/05/15メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 4回この商品を含むブログ (8件) を見…

『中越地震被災地研究からの提言:未来の被災地のために』

中越地震被災地研究からの提言―未来の被災地のために作者: 辻竜平出版社/メーカー: ハーベスト社発売日: 2011/06/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る「社会学的研究」から「提言」するとは、こういうことになるのかと感心い…

計量分析手法研究会のお知らせ

主に社会学や経済学の分野で使われている比較的新しい計量分析手法について、実際にその手法を研究で使っている研究者が、その根本的な発想、推定の仕組みなどから解説をする研究会を開催します。研究内容ではなく、あくまで「手法」に関する研究会です。手…

『大卒就職の社会学:データからみる変化』一部サマリ

学部ゼミ生を抱える身として、サマリをいちおうメモ程度に。(一部の章のみ。)大卒就職の社会学―データからみる変化作者: 苅谷剛彦,本田由紀出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2010/03/20メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 38回この商品を含むブロ…

『Stataで計量経済学入門 第2版』出版のお知らせ

日本で最初のStata解説書であった第1版の出版(2007年)から4年が経ちました。その間、Stataはversion 11まで更新されており、コマンド体系も少なからず変更されました。第1版では掲載できなかった内容も多く、第2版の出版を企画して1年あまり、ようやく世に…

(非計量さん向けの)統計学の話:誤差編

今回は「誤差」編です。誤差について説明するためには、どうしても「観察(observation)」の次元に話を差し戻す必要があります。前回に引き続いて「年収」を説明するための観察をする場面を考えます。次のように考えてください。 年収の観察値 = 性別 + 年齢 …

(非計量さん向けの)統計学の話:バイアス編

(今回はですます調でいく。いや行きます。)まずは、私の後輩や知人たちが書いた本です。↓エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ)作者: 前田泰樹,水川喜文,岡田光弘出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2007/08/03メディア: 単行本(ソフトカ…

質的研究と量的研究について

とある出版企画でそういうお話を書かなければいけないので、社会学におけるいわゆる「質的研究」と「量的研究」の区別についてメモを書いておく。結論から言うと、次のように考えるとミスリーディングである。つまり、「まずある<理論>があって、それを<…

GlobalIndexからみた各国のグローバル化の進み具合

入社式での社長のスピーチから人文系の学術書にいたるまで、頻繁に使われる「グローバル化が深まる中で...」という枕詞ですが(ここ2ヵ月ほどはその地位を「震災」に譲っているようです)、たいていの場合は特にデータに基づかない印象論で語られていると思…

サンプリングについてのひとつのお話

世論調査などでもしばしば「層化二段無作為抽出」という言葉を目にする人は多いのではないだろうか。この手続を簡潔に説明することはなかなか難しいので、何度テキストを読んでもピンとこない、という人は意外に多いようである。その理由の一つは、「単純ラ…

雇用におけるジェンダー格差をどう測るか?

2008年のOECD Employment Outlookの第3章では、ジェンダーとエスニシティによる雇用・賃金格差が特集されています。目についたところを抜粋すると... OECD参加国では、女性の雇用率は男性より20%小さく、賃金は17%低い。 賃金格差が最も大きいのはトルコ、メ…

御礼『トランスナショナル・フィリピン人の民族誌』

著者の永田さんからいただきました。ありがとうございます。また、博論の出版(あらためて)おめでとうございます。トランスナショナル・フィリピン人の民族誌作者: 永田貴聖出版社/メーカー: ナカニシヤ出版発売日: 2011/03メディア: 単行本 クリック: 12回…

御礼『外国人へのまなざしと政治意識』

著者の方から恵投いただきました。ありがとうございます。外国人へのまなざしと政治意識―社会調査で読み解く日本のナショナリズム作者: 田辺俊介出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2011/02/15メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (5件) を…

OECDデータ講習会終了

OECD東京センターの講師の方をお呼びしての、OECD iLibraryのデータ利用講習会、無事終了しました。おかげさまで、かなり沢山の方に参加いただきました。iLibraryの契約をしている法人、契約を検討している法人になら、全国津々浦々データ利用説明の出張が可…

御礼『自己の発見:社会学史のフロンティア』

著者の片桐先生より恵投いただきました。ありがとうございます。自己の発見―社会学史のフロンティア―作者: 片桐雅隆出版社/メーカー: 世界思想社発売日: 2011/01/17メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 20回この商品を含むブログ (6件) を見る「自己」や「…

OECDデータ講習会の告知

2月16日(水)に、立命館大学衣笠キャンパスにOECD東京センターの方をお呼びして、データについての講習会を行います。興味のある方は、チラシにある連絡先までご一報ください。(かなりの人数に対応できる予定ですが、万が一希望者多数の場合は、先着順にし…