社会学者の研究メモ

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第二回連携研究会のお知らせ

下記PDFの要領で研究会を開催致します。参加希望の方は事前に告知文PDFにある連絡先までお願いします。会場がそれほど広くないので、万が一希望者多数の場合は参加制限することもございます。ご了承ください。ワークショップ「人文学・社会科学における質的…

説明と選抜:統計学における2つの「関心」

社会学者や経済学者にとって、統計学をベースにした計量分析とは、何かを因果的に説明する道具であるという側面がある。賃金を学歴で説明するというとき、それは他の条件が同じで学歴が変化したときの賃金の変化量を推定する、という意味である。(記述的な…

Max OS X Lionで日本語LaTeX環境

※若干修正しました(追加ファイルやbib、bstファイルの置き場所)。OSをLionに変えてLaTeX環境も再構築したとき、少し手間取ったのでメモしておきます。私自身「ど」のつく初心者ですので、初心者がひっかかりやすいところを少しカバーできていると思います…

社会保障の「気前良さ」は政府支出の大きさでは測れない

政府は増大する社会保障支出を背景に、いよいよ増税に向けた調整を本格化させている。他方でアカデミズムにおける社会保障論(福祉国家論)をみると、日本は基本的に社会保障に関して低い水準にあるということがたいていの議論の出発点となっており、現在の…

『平等と効率の福祉革命』

以前共著で論文を書いた訳者の一人の方から頂きました。ありがとうございます。エスピン=アンデルセンは2000年前後からジェンダー格差を意識した論考を続けていますが、本書はその一つの到達点であり、重要な著作であると言えます。平等と効率の福祉革命――新…

反事実的状況のマクロシミュレーション

(授業やら会議やらでバタバタ気味で、誤字などある可能性もありますが、とりあえずあげておきます。)性別賃金格差の研究では、しばしば「男女の◯◯構成が同じだと仮定すれば賃金格差は△△だけ縮小する」といった、マクロレベルでの反事実的状況の想定が行わ…

社会学における「理論の実証」

(以下は二〜三カ月前に書いたメモですが、寝かせておいてもあまり意味がなさそうだし、稲葉先生もシノドスの論考を公開されたのでいいタイミングだと思うのもあり、ちょっと手を入れた上で公開します。) 社会学の問いの特徴 私は、学部のゼミでは(大学院…

御礼

ICPSR国内利用協議会でお世話になっている東大社研の前田先生より下記のご著書を恵投いただきました。ありがとうございます。先日政治学会のセッションにもおよびいただいたこともあり、徐々に政治学分野の研究者の方と交流が増えてきたように思います。いろ…

「家族福祉論の解体」感想

先日の研究会にも参加してくれた久保田さんの最近の論文です。 久保田裕之、2011、「家族福祉論の解体」『社会政策』3(1): 113-123. 非常に示唆的な論考で、興味深く読みました(今年一番の収穫だったかも)。私なりに内容をまとめると...(下手なまとめかも…

第一回「連携」研究会を終えて

「来ても10人くらいだろうから、ちっこい部屋でいいや」という予想を大幅に上回る30名の方が参加された「人文学・社会科学における質的研究と量的研究の連携の可能性・第一回研究会」を、無事終了致しました。(無事、といってもちょっと研究会本体の時間を…

マルチレベル分析の解説資料

twitterをみてて思いましたが、いわゆる「マルチレベル分析」についてはいろいろ誤解もあるようです。7/10の「計量分析手法研究会」(@立命館大学朱雀キャンパス)で報告した解説資料を置いておきます。(学会の報告資料ではないので参考程度ということで。…

「統計オタク」の分析はつまらない?

実践としての統計学作者: 佐伯胖,松原望出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2000/01メディア: 単行本購入: 48人 クリック: 629回この商品を含むブログ (16件) を見る 第5章「統計の実践的意味を考える」(佐藤俊樹) 研究会に向けて、同じ社会学者が書…

第一回連携研究会のお知らせ

下記PDFの要領で研究会を開催致します。参加希望の方は事前に告知文PDFにある連絡先までお願いします。会場がそれほど広くないので、万が一希望者多数の場合は参加制限することもございます。ご了承ください。ワークショップ「人文学・社会科学における質的…

『社会調査のための統計学』

社会調査のための統計学 ?生きた実例で理解する? (現場の統計学)作者: 神林 博史 ,三輪 哲出版社/メーカー: 技術評論社発売日: 2011/07/23メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 63回この商品を含むブログ (7件) を見る一変数の分布から統計的検定の基…

Stataの予測値コマンド(3)

※本記事に一部加筆修正しました。(2012.7.4)Stata v11から、予測値の計算に新たにmarginsコマンドが導入されました。marginsはほぼすべての推定モデルに対応しており、確率や限界値など、柔軟なかたちでの予測値出力を可能にしてくれます。とはいえ、扱い…

量的研究と質的研究の連携に向けて

足の調子が少し悪くてひきこもってます...。しかし手は動く。筒井が所属する立命館大学人文科学研究所からの助成で、「人文学・社会科学における質的研究と量的研究の連携の可能性」研究会をスタートさせました。さしあたり3年間継続します。研究助成を申請…

図(だけ)で説明する回帰分析

分かっているようで意外と分かっていないのが回帰分析です。回帰分析の考え方をできるだけ図だけで説明した資料を作りましたので、適宜ご参照ください。「(ほぼ)図(だけ)で説明する回帰分析」(PDF)主な内容は、以下のとおりです。 説明変数と撹乱項の相関の…

固定効果とランダム効果の区別

混合効果モデルの話の続き。(引き続き少しテクニカルなので注意。)「固定効果とランダム効果」の区別については、いくつかの解説テキストやウェブサイトに記述があるが、どうもしっくりこないので私なりの解釈をメモ程度に書いておく。(より詳しくは7/10…

Stataでマルチレベル・モデル(2)

今回の内容は少々専門的なので注意。Stataで計量経済学入門 第2版作者: 筒井淳也,水落正明,秋吉美都,坂本和靖,平井裕久,福田亘孝出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2011/05/15メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 4回この商品を含むブログ (8件) を見…

『中越地震被災地研究からの提言:未来の被災地のために』

中越地震被災地研究からの提言―未来の被災地のために作者: 辻竜平出版社/メーカー: ハーベスト社発売日: 2011/06/01メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る「社会学的研究」から「提言」するとは、こういうことになるのかと感心い…

計量分析手法研究会のお知らせ

主に社会学や経済学の分野で使われている比較的新しい計量分析手法について、実際にその手法を研究で使っている研究者が、その根本的な発想、推定の仕組みなどから解説をする研究会を開催します。研究内容ではなく、あくまで「手法」に関する研究会です。手…

『大卒就職の社会学:データからみる変化』一部サマリ

学部ゼミ生を抱える身として、サマリをいちおうメモ程度に。(一部の章のみ。)大卒就職の社会学―データからみる変化作者: 苅谷剛彦,本田由紀出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2010/03/20メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 38回この商品を含むブロ…

『Stataで計量経済学入門 第2版』出版のお知らせ

日本で最初のStata解説書であった第1版の出版(2007年)から4年が経ちました。その間、Stataはversion 11まで更新されており、コマンド体系も少なからず変更されました。第1版では掲載できなかった内容も多く、第2版の出版を企画して1年あまり、ようやく世に…

(非計量さん向けの)統計学の話:誤差編

今回は「誤差」編です。誤差について説明するためには、どうしても「観察(observation)」の次元に話を差し戻す必要があります。前回に引き続いて「年収」を説明するための観察をする場面を考えます。次のように考えてください。 年収の観察値 = 性別 + 年齢 …

(非計量さん向けの)統計学の話:バイアス編

(今回はですます調でいく。いや行きます。)まずは、私の後輩や知人たちが書いた本です。↓エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ)作者: 前田泰樹,水川喜文,岡田光弘出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2007/08/03メディア: 単行本(ソフトカ…

質的研究と量的研究について

とある出版企画でそういうお話を書かなければいけないので、社会学におけるいわゆる「質的研究」と「量的研究」の区別についてメモを書いておく。結論から言うと、次のように考えるとミスリーディングである。つまり、「まずある<理論>があって、それを<…

GlobalIndexからみた各国のグローバル化の進み具合

入社式での社長のスピーチから人文系の学術書にいたるまで、頻繁に使われる「グローバル化が深まる中で...」という枕詞ですが(ここ2ヵ月ほどはその地位を「震災」に譲っているようです)、たいていの場合は特にデータに基づかない印象論で語られていると思…

サンプリングについてのひとつのお話

世論調査などでもしばしば「層化二段無作為抽出」という言葉を目にする人は多いのではないだろうか。この手続を簡潔に説明することはなかなか難しいので、何度テキストを読んでもピンとこない、という人は意外に多いようである。その理由の一つは、「単純ラ…

雇用におけるジェンダー格差をどう測るか?

2008年のOECD Employment Outlookの第3章では、ジェンダーとエスニシティによる雇用・賃金格差が特集されています。目についたところを抜粋すると... OECD参加国では、女性の雇用率は男性より20%小さく、賃金は17%低い。 賃金格差が最も大きいのはトルコ、メ…

御礼『トランスナショナル・フィリピン人の民族誌』

著者の永田さんからいただきました。ありがとうございます。また、博論の出版(あらためて)おめでとうございます。トランスナショナル・フィリピン人の民族誌作者: 永田貴聖出版社/メーカー: ナカニシヤ出版発売日: 2011/03メディア: 単行本 クリック: 12回…

御礼『外国人へのまなざしと政治意識』

著者の方から恵投いただきました。ありがとうございます。外国人へのまなざしと政治意識―社会調査で読み解く日本のナショナリズム作者: 田辺俊介出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2011/02/15メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (5件) を…

OECDデータ講習会終了

OECD東京センターの講師の方をお呼びしての、OECD iLibraryのデータ利用講習会、無事終了しました。おかげさまで、かなり沢山の方に参加いただきました。iLibraryの契約をしている法人、契約を検討している法人になら、全国津々浦々データ利用説明の出張が可…

御礼『自己の発見:社会学史のフロンティア』

著者の片桐先生より恵投いただきました。ありがとうございます。自己の発見―社会学史のフロンティア―作者: 片桐雅隆出版社/メーカー: 世界思想社発売日: 2011/01/17メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 20回この商品を含むブログ (6件) を見る「自己」や「…

OECDデータ講習会の告知

2月16日(水)に、立命館大学衣笠キャンパスにOECD東京センターの方をお呼びして、データについての講習会を行います。興味のある方は、チラシにある連絡先までご一報ください。(かなりの人数に対応できる予定ですが、万が一希望者多数の場合は、先着順にし…

Stataによる予測値のプロット(2)

logitシリーズの順序ロジットの場合です。sdlは性別分業態度(値が高いと保守的)。ちょっと気が進まない方法ですが、prgenというユーザ定義のコマンドを使うと簡単です。prgenはspostというシリーズに入っています。事前に"findit spost"をしてインストール…

Stataによる予測値のプロット(1)

最近の論文では、回帰モデル推定後に予測値をプロットすることが多いようです。Stataで分析しているときにそれをやる方法についてまとめておきます。まず、連続量の説明変数による被説明変数の予測値の変化を見たい場合、Stataで最も簡単に直接グラフを出力…

社会調査法のテキスト

日本でも社会調査法のテキストブックは数多く出版されている。おそらく100冊は下らないのではないか。質の高いものも多く、そのなかでどれを選ぶのか、なかなかに悩ましい問題だ。講義で使うこともあって様々なテキストブックを眺めてきたが、私見では、下の…

中国の「市民社会」

大学の研究プロジェクトの一環として、香港の香港中文大学、広州のJinan大学と中山大学の研究者とのミーティングを行ってきました。香港は(記憶が正しければ)4回目の訪問、中国本土は昨年の北京に続いて二回目。備忘録を書きとどめておきます。香港中文大…

『ある理論経済学者のお話の本』

出版社から恵投いただきました。(小林社長、ありがとうございます。以前の私と小林さんのやりとりが、再版のきっかけのひとつになったそうです。)ある理論経済学者のお話の本作者: ジョージ・A.アカロフ,George A. Akerlof,幸村千佳良,井上桃子出版社/メー…

御礼『仕事と生活:労働社会の変容』

同僚の前田信彦先生に、単著を頂きました。感謝します。(業務でご多忙な中、単著を出版されるのは、頭が下がる思いです。)「叢書・現代社会学」というシリーズの第二巻のようです。仕事と生活―労働社会の変容 (叢書・現代社会学)作者: 前田信彦出版社/メー…

『結婚の壁』

拙論文が掲載された本が出版されました。結婚の壁―非婚・晩婚の構造作者: 佐藤博樹,永井暁子,三輪哲出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2010/10/23メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 21回この商品を含むブログ (8件) を見る担当したのは「第5章 結婚願望は…

(続)『アジアの家族とジェンダー』

今回は第II部の「中国・台湾」のサマリ。第4章 中国の育児 1949年の社会主義革命以前は、都市部においては専業主婦が支配的だった。が、革命後は共働きが一般化。 1978年の改革開放以降、女性労働力率が減少に転じた。裕福な層で専業主婦が増える兆しがある…

『アジアの家族とジェンダー』

アジアの家族とジェンダー (双書ジェンダー分析)作者: 落合恵美子,山根真理,宮坂靖子出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2007/02/19メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (13件) を見る必読文献だと思うが、なぜだか今まで読む機会がなかった…

「排外主義」についての文献とデータ

日本に帰国して約3週間、遅ればせながらシノドス・ジャーナル(および朝日web ronza)に掲載していただいた記事の文献情報を掲載する。排外主義の規定要因についての研究にはそこそこの蓄積があるが、国際比較可能なデータを使用した経験的分析の論文のみご…

低成長経済化における福祉国家戦略

以前取り上げた、 Esping-Andersen, Gosta, 1996, "After the Golden Age? Welfare State Dilemma in a Global Economy" in Gosta Esping-Andersen (ed.), Welfare States in Transition. Sage Publications. だが、かなり断片的なまとめになっていたので、…

福祉レジームとジェンダー:文献情報

スウェーデンで社会保障を研究されているid:dojinさんからSynodos Blogの拙稿にいただいたコメント中に「文献情報があれば」という要望があったので、改めてここで一部を紹介する。時系列的に並べておくので、参考になれば幸いである。さしあたりの出発点は…

なぜ社会学の格差研究はややこしいのか(その二)

前回説明したように階層とは価値付けされた資源へのアクセスの格差であり、あくまで人々による資源の価値付けに依存した社会構造の記述である。したがって多くの人に共有された価値付けがない資源については、そういった資源へのアクセス格差を議論すること…

なぜ社会学の格差研究はややこしいのか(その一)

院生に勧められて以下の論文を読んだ。専門分野(家族)のジャーナルと違って『社会学評論』は少々見落としがちになるので、こういう機会は助けになる。 吉川徹,2003,「計量的モノグラフと数理:計量社会学の距離」『社会学評論』53(4):485-498. 内容自体は…

社会階層と社会的ネットワークの多様性

(注意:論文内容に関する判断は、ぜひ実際の論文をお読みになった上でお願いします。) 大和礼子, 2000, "社会階層と社会的ネットワーク"再考, 『社会学評論』51(2), 235-250. 家族と社会的ネットワークに興味がある研究者なら読むべき重要な論文だと思った…

「幼稚園と学力の関係」における相関関係と因果関係

統計データの解釈について、しばしば指摘される注意事項が「相関関係と因果関係を混同するな」というものである。今回はこの警句について、「幼稚園出身の子の正答率、高い傾向 全国学力調査」(asahi.com)という記事を題材にして少々詳しく説明してみよう。…