社会学者の研究メモ

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社会学

院ゼミ(2008.6.2)

修士課程の子もいるし、英語に息切れしているといけないので、今週は論文一本だけ。 Arland Thornton and Thomas E. Fricke, 1987, Social Change and the Family: Comparative Perspectives from the West, China, and South Asia, Sociological Forum, 2(4…

進化経済学会

数週間前にスピーカーを頼まれたのですが、はてどういう話をしようか...。中途半端に経済学っぽい話をするより、やっぱり「社会学ではこう考える」というところから始めた方がいいんでしょうかね。ギデンズの構造化理論とヴェブレンの制度論って発想はほとん…

ASR:知名度か能力か?

今日は会議ばっかり(朝から4つ連続)であまり勉強できませんでした。このまま寝るのも悔しいので論文一個だけメモ。 Erin Leahey, 2007, "Not by Productivity Alone: How Visibility and Specialization Contribute to Academic Earnings". ASR, 72(4):533…

ASR:階級とステータス

ゼミで読むかもリストとして、最近のASR(American Sociologial Review)から、目についた論文をメモ。 Tak Wing Chan and John H. Goldthorpe, 2007, "Class and Status: The Conceptual Distinction and its Empirical Relevance". ASR, 72(4):512-532. Gold…

制度的同型化

一部トップ校でとんでもない入学競争倍率になっているのが話題になったアメリカの大学ですが(ハーバードなんかではそこそこの高校の主席卒業でも落ちてたりするらしい)、ここ数年の流れをみると、その裏で学費値下げ合戦をやってきたみたいです。 The (Yes…

今日のゼミ

いつもゼミで何をしようか迷っているのですが、今回は新たな試みとして、3回生(立命2期生)ゼミでこういうことをしました。 命題1:「就業・転職においては強い紐帯よりも弱い紐帯の方が有利なことがある。」なぜか? 命題2:「大人になるにつれて、ネット…

国際シンポジウム

年度末のこの時期に講演なんて入ってて大変でしたが、とりあえず終わってほっとしました。日本語でもいいと言われたのですが、練習だと思って英語で報告。人間開き直ればなんでもやれるもんです。会場は○○館衣笠キャンパスの「創思館カンファレンスルーム」…

グローバル化と家父長制

今年度副査を勤めた修論のなかに、バングラデシュのマイクロ・ファイナンスの効果についてのフィールドワークを行ったものがあった。フィールドワークをあの悪環境の中で行ったことと、マイクロ・ファイナンスの効果(論文では女性のエンパワーメントに焦点…

明日Stata講義

いきなりですが、明日(10日)、明後日(11日)とStataの基礎コースが開催されます。(場所は東大、主催は東大社研。詳細。)私は1日目を担当。前回は直前にインフルエンザにかかって大変だったのですが、今回は今のところ元気。でも念のために早く寝よう...…

ミスマッチ

今日は一日中Stataでプログラム書いてました。図にあるみたいなかたちで、結婚において重視することを巡るズレをみつけようといろいろやってました。今回はモデルの推計はあまりせずにデータの加工で工夫して見せようかと。やっぱり統計用ソフトウェアは加工…

本でました。

いちおうお知らせ。一生に一度は出してみたかった世界思想社の白いヤツシリーズ。親密性の社会学―縮小する家族のゆくえ (SEKAISHISO SEMINAR)作者: 筒井淳也出版社/メーカー: 世界思想社発売日: 2008/01メディア: 単行本 クリック: 60回この商品を含むブログ…

メディアリテラシー?

チェコの「アートグループ」がお天気カメラをジャックして核爆発のフェイク画像を放送した、という内容。 お天気カメラが核爆発の瞬間を捉えて生放送今回の活動によって、実際の我々が現実と思っている世界は単純にメディアが作った世界を見ているだけであり…

Stata10

今日は年内最後の授業でした。余興でサンタさんの帽子をかぶって教室に入り、John LennonのHappy Xmasを流しました。ええと、全く反応がなかったわけではないです。講義の後、大学経由で頼んでおいたStata10が届いたのでさっそく入れてみました。インターフ…

対戦型ゲームと暗黙ルール

マイミクのゼミの学生から「少しは柔らかいネタで書いてよ」と言われたので、がんばって書いてみようかと。知る人は知っていますが、私は学生〜院生時代とかなりのゲーム好きでした。でも家でやるというより、アーケードを拠点に仲間や知らない人と対戦をす…

社会学主義

講義録は小休止。私はよく「経済学は社会学より進んでいる」とか(別に言わなくてもいいのに)「社会学者にはアホが多い」とか言って、一部の経済学者の方から変な目で見られたり、同業の社会学者からは白い目でみられたりするんですけど、他方で変なところ…

昔の講義録:そもそも自由って?〜哲学的思考の練習〜

ウィトゲンシュタイン流にいえば,言葉の意味は言葉の使用である.だから自由の意味は,私たちが自由という言葉のもとで行うコミュニケーションにおいて了解されているものである.しかしこれだと話が終わってしまうので,少し話を展開させてみよう.例えば…

昔の講義録:「自己責任」について(2):「自己選択」と「自己責任」

このような例は複雑に入り組んだ現代社会においては枚挙にいとまがないだろう.にもかかわらず,現代はよく「自己選択・自己責任」の時代だと言われる.自分のことは自分で選択でき(あるいはしなくてはならず),その選択の結果を自分の成果として享受する…

昔の講義録:「自己責任」について(1):行動とその帰結における責任の範囲

「個人と社会にとっての合理性が異なる」ということの帰結は,全体社会の側から見れば「資源配分の非効率性」と考えることができる.個人が全体社会のニーズに合わせて行動すれば,より無駄が少なくなり,社会に属する個人全体の効用は上昇する.逆にこの調…

集団・組織

『制度』に引き続き、東京大学出版会の「社会科学の理論とモデル」シリーズを読んでみました。集団・組織 (社会科学の理論とモデル)作者: 森脇俊雅出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2000/10メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件)…

社会福祉士試験(社会学分野)2002-2004

引き続き過去問に挑戦。まずは2004年。 集団概念:準拠集団、第1次集団、内集団、ゲマインシャフト ジェンダー:女性のライフコース、出生動向基本調査、労働白書 合計特殊出生率:国際比較 社会調査:社会調査にかする基本知識、インタビュー調査、調査倫理…

社会福祉士試験(社会学分野)続き

2005年度の問題。 就業構造変化:労働力調査、就業構造基本調査 世帯動向:日本の世帯数の将来推計(全国推計)。社人研の報告書ですね。 社会調査:サンプリング方法 若年者就業:フリーター、ニート 男女平等:男女共同参画 環境問題:ストックホルムの人…

社会福祉士試験(社会学分野)

非常勤先の「社会学」の講義が社会福祉士試験の対応科目にもなっているので、ざーっと過去問をみてみました。社会学の問題は10問です。2006年度の出題テーマを書き出してみると...。 社会的性格:フロム、ミルズ、ホワイト、リースマン、ベネディクト 社会変…

学会乱立の弊害

とくに社会学とか福祉の分野。ぼちぼち誰かがこの問題に取り組むべきだと思います。弊害は主に二つ。ひとつは費用の面で非効率的であること(社会的にも個人的にも)。次に個人業績の評価がやりにくくなること。後者は、ごく少ない人数で構成された学会での…

制度論と同型化理論(続き)

前々回エントリの続き。結論から言うと、同型化理論をはじめとする社会学的な組織論は、やっぱり組織自体をうまく説明できていないと思います。というか、説明体系がそもそも「それって別に組織じゃなくてもいいんじゃない」というつっこみを許しているので…

制度論と同型化理論

夏休みももう少しで終わり...(ふつうはもう始まってるか)。いい機会なので、きちんと読み直してみました。河野先生の『制度』。ここでは本の感想ではなく(言うまでもなく必読だと思う)、諸分野での制度論の比較を論じてみましょう。まずは社会学の制度論…

ログリニア講義

大阪商業大学で行われている山口一男先生(シカゴ大学)によるログリニアの応用モデルの講義(二日間連続の集中講義)に出てきました。今日は一通りのassociation modelsからnested logit modelまで、数理的説明とLemを使ったデモ。数年前に最初に勉強したと…

社会学再入門と新制度派経済学

ここ最近、なんだか妙に売れているようです。私の本。本屋さんの棚にはあまり並んでないんですけどね。こんなことだったら、タイトルをもうちょっとポピュラーなものにしておけばもう少し...(と、変に欲がでてきました)。制度と再帰性の社会学 (リベラ・シ…

「ネットワーク」はいいものか?

ここんところ東京で快適に過ごしております。京都よりは気候的にラク。夏の京都ときたら...。(京都のみなさん、バテてませんか〜?)さて次回の日本社会学会の大会で報告しようとしているネタは、少々過激かもしれない(し、それは単なる自意識過剰かもしれ…

「当たり前を疑う」ことの社会学

「当たり前を疑う」ことが社会学の目的であるように語る人たちがいる。私自身は、これってなんだか(悪い意味で)ものすごく構築主義的な発想だなあ、という感想を持ってしまう。それに疎外論とか物象化論の匂いもして、かなり警戒してしまう。科学的営みが…

学術的討議のマナー

常日頃から思っていること。これだけ守れば、たとえそれが不毛な学際的討議でも、かなりストレスが減ると思うんですけど。 文化とか多元性を説明項にしない。 これはもう...声を大にしていいたい。「それって欧米中心主義的発想でしょう? 文化的多元性を考…