社会学者の研究メモ

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社会学

「個人と社会の関係」を別角度から考えてみる

この記事をおもしろく読ませていただいたので、個人的に引き延ばしてみたくなりました。(実は現在社会学のテキストブックを書いており、そこに盛り込むはずの内容です。) 全体最適 vs. オレ様最適(Chikirinの日記) 一読して経済学の話かと思って聞いてま…

祝増刷

制度と再帰性の社会学 (リベラ・シリーズ (8))作者: 筒井淳也出版社/メーカー: ハーベスト社発売日: 2006/06メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 49回この商品を含むブログ (26件) を見るハーベスト社の社長さんから連絡があって、近いうち増刷されるそうで…

経済学と社会学

前回のエントリは自分で読んでも不親切なような気がしますので、ちょっと補足しておきます。まず、経済学のモデルが規範的かどうか(効率性という価値基準からの政策決定のモデルをもっぱら意図しているか)ですが、もちろん違うという意見もあるかと思いま…

グラノベッターのウィリアムソン批判

Granovetter, Mark. 1985. Economic Action and Social Structure: The Problem of Embeddedness. AJS 91(3): 481-510.09年のノーベル経済学賞を受賞したO.ウィリアムソンの組織論(市場/ヒエラルキーモデル)に対するM.グラノベッターの批判が展開された論…

カナダの社会学の動向

ここのところ全く社会学ネタがないので、ひとつ投下。午後にトロント大学の博士課程在学中の人とお茶をする機会がありました。「カナダでは社会学って最近どういうかんじ?」という話もしたので、聞いた内容を軽くまとめておきます。最近の一番の関心事は「…

シンポジウム報告

9月15日に北海道大学で結婚についての話をします。 公開シンポジウム「現代日本の結婚」開催のお知らせ(文学研究科大学 院教育改革支援プログラム) このあとすぐに関学で統計の講義。ヒマなときと多忙なときが極端だ、この仕事は。

リベラリズム、コミュニタリアニズムと社会学

先日ディスカッサントとして招かれた社会学史学会で、コミュニタリアニズムについて話をする機会があった。おさらいがてら読んでみたのが、菊池『日本を甦らせる政治思想:現代コミュニタリアニズム入門 』だったのだが...。私も、著者自身が「日本ではコミ…

『概念分析の社会学』

安藤太郎さん、酒井泰斗さん、前田泰樹さんの三名から、『概念分析の社会学』のご恵投に預かりました。お礼申し上げます。安藤・前田両氏とは大学院時代に同じゼミで長い間学びあった仲です。その二人がこういった啓発的な著作に関わっているのを見ると、発…

結婚の理論・紛争の理論

たまには研究メモを書かないとタイトルが嘘になってしまうな。というわけで、本来の私の研究分野についての、ちょっとした整理的考察をひとつ。経済学で結婚の理論といえばBeckerやGrossbard-Shechmanあたりになるのでしょうか。BeckerはともかくGrossbard-S…

アカデミズム

太郎丸博先生が阪大を去られるにあたって貴重な言葉(日本の社会学への苦言)を残しておられます。社会学はヒューマニティではない以上この言葉は当たり前といえば当たり前ですが、たしかにいろんな「言い訳」をもって研究(学会報告と査読論文投稿)を行わ…

世代間不公平

阪大の大竹先生のブロク経由で購入。改めてやっぱり陰鬱な気分になるなあ。だまされないための年金・医療・介護入門―社会保障改革の正しい見方・考え方作者: 鈴木亘出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2009/01メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 72回…

連帯と承認

連帯と承認―グローバル化と個人化のなかの福祉国家作者: 武川正吾出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2007/11メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 46回この商品を含むブログ (22件) を見るいまさらながら読了。何はともあれ、本書は必読だと思った。3…

ソーシャル・キャピタル論の考察(その二)

まだまだ全然整理できてないのだけど、放置するのも無責任なので、中間報告ということで。現状でアクティブになっているソーシャル・キャピタル論には、大きく分けて二つある。詳しくは『ソーシャル・キャピタル』(ミネルヴァ書房)の石田光規先生の「解題…

マルチレベル・モデルの解説論文

数理社会学会が発行するジャーナル『理論と方法』の最新号(2008:23:2)にマルチレベル・モデルの解説をした論文(東京大学社会科学研究所の不破麻紀子さんと共著)が掲載されました。(マルチレベル・モデルについては、当ブログの「Stataでマルチレベル・モ…

格差社会論(続き)

第4章 階層再生産の神話(盛山和夫) 一部ではよく知られている話ですが(そうでもないか?)、経済学者は個人間の格差を問題にするのに対して、社会学者はその昔から世代をまたぐ格差の再生産をこそ問題にしてきた、と言えます。この意味では、経済学者が結…

忙しい人向け格差社会QandA

ソーシャル・キャピタルの話は少しお休み。(少し整理する時間をください。)今日は別の話です。最近、授業やゼミで格差社会について話題にすることが増えたという先生方は多いのではないでしょうか。「格差は拡大しているの?」「格差は固定化しているの?…

ソーシャル・キャピタル論の考察(その一)

ソーシャル・キャピタルの定義は人によって違うし、定義している人がじゃあ道理の通った整理をしているのかというと意外にそうじゃないので、ソーシャル・キャピタルという概念を有効に活用するにはどうしたらいいのかを考察してみよう。まずP.ブルデューの…

公共圏と親密圏(その2)

前回の著作で私が出した仮説は、こうだった。 親密な関係(ランダムではなく特定の人物との関係を積み重ねていくタイプの関係)には、メンタルな満足を効率的に産出するという合理性がある。だから市場や政府による配分原理が適用される公的世界とは別に親密…

公共圏と親密圏(その1)

The Purchase of Intimacy作者: Viviana A. Zelizer出版社/メーカー: Princeton Univ Pr発売日: 2007/03/26メディア: ペーパーバック クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る上記の本は、アメリカでは有名ヴィヴィアナ・ゼリザー(Viviana Zelizer)…

ASRの計量モデル

アメリカの社会学の論文といえば、ほとんどが計量分析を使ったもの。どうも最近はシンプルな計量モデルはほとんど使われていないようです。ひまなときにまとめてみようかと思いますが、とりあえずASR2007:72:5号が手元にあるので、ざっとみてみました。 Bloc…

Stataの予測値コマンド

日常生活がヒッキーで何らエキサイティングなことがないので、またStataヒマネタ。Stataでモデルを推計したあとに予測値を計算するにはpredictコマンドを使いますが、最近出版された入門書(下記参照)でも紹介されているように、ユーザ提供のprvalueコマン…

Stataでマルチレベル・モデル

ちょうどマルチレベル・モデルの原稿を書いたので、ついでにこのネタ。マルチレベル・モデル(あるいは混合モデル)で分析したいときはHLMやSASのproc mixedがよく使われてますが、Stataでもversion9から分析可能になりました。ただし専用アプリのHLMなどと…

Seoul National University

カンファレンスでのスピーチのため、本日ソウルに到着しました。滞在はソウル大学内のファカルティハウス。さすが韓国トップの大学だけあって、立派な宿泊施設があります。晩はホストのソウル大学Eun教授、共同報告者の韓国人研究者、その他台湾や香港から来…

学部生の論文

筒井ゼミではどんなかたちでもいいから調査をさせるのを基本にしてます。とはいえ、そうすると内容がおのずと「調査できること」になっちゃうので、テーマ設定が狭くなりがち。問題意識や背景なんかでまずは広い視野を語ってもらうようにはしてますが、なか…

Erickson先生講演@明学

多様なソーシャル・キャピタルはいかにして手に入るのか:カナダにおける知見 (Varieties of Social Capital and Their Sources in Canada) by Bonnie Erickson (Toronto University) 26日に明治学院大学で行われたBonnie Erickson先生(トロント大学)の講…

ソウル大学で報告

ソウル国立大学のEun教授からの招待で、8月8-9日のEast Asian Family Conferenceで報告をします。タイトルは"Mate Selection in Korea and Japan"(予定)です。成均館大学のKoh (Chi-young)博士との共同報告です。その時期に韓国におられることがあれば(っ…

学部ゼミ(6.18)

3、4回生合同でレクチャー。テーマは経済問題の基礎知識。会社組織、株式市場、景気、インフレ・デフレ、雇用問題などをざ〜っと説明。たまにゼミでもレクチャーやるんですが、経済学や経済問題へのリクエストがたまに来ます。授業ではあまり学ぶ機会がなか…

院ゼミ(6.16)

今日は自分で報告しました。院ゼミも参加人数が増えてきたので、ぼちぼち場所を変えるかな〜。 Miller McPherson, Lynn Smith-Lovin, and Matthew E. Brashears, 2006, "Social Isolation in America: Changes in Core Discussion Networks over Two Decades…

院ゼミ(6.9)

京大の院生による、日本における「社会的排除social exclusion」概念の適用可能性についての報告。報告者自身(フィンランド人の方)はこの概念自身にはどちらかといえば批判的で、もともとは社会民主主義的な福祉レジームの背景から生じてきたものだけに、…

JGSSカンファレンス

週末に「JGSS国際シンポジウム2008」(大阪商業大学)で報告します。日曜の方です。(会場言語は英語ですが、興味のある方はぜひ。)GSSのディレクター、Tom Smith博士もいらっしゃいます。私の報告は台湾、韓国の研究者との共同報告で、内容はEASS(East Asi…